なんば広場 人が主役の駅前空間へ /ゼミ旅行報告

2025年9月21日(日)に研究室のM2・1名、M1・1名、B4・4名、B3・7名、萩原で、ゼミ旅行(縮小バージョン)として大阪なんば広場や御堂筋、グラングリーン大阪の視察に行いました。今回は、なんば広場の取り組みや視察について、M1家田が報告します。なんば広場では、ハートビートプラン岸本さんにお話を伺いました。


なんば駅の地下街を抜けて地上に出ると、目の前に広がるのは人でにぎわう「なんば広場」。かつて車道とタクシープールが占めていたこの場所は、今では待ち合わせや休憩、イベントなど、さまざまな人が思い思いに過ごす空間へと生まれ変わっている。

この再編に携わったハートビートプランの岸本さんにお話を伺った。岸本さんによると、再編のきっかけは2008年、なんさん通り商店街の呼びかけから始まったという。

「まちの顔」を取り戻すために

当時のなんば駅前は、大阪髙島屋となんばマルイの間に車道が2本通り、中央にはタクシープールが整備されていた。一方で、御堂筋側には喫煙所があり、夜になると商店街側にはキャッチの姿も見られるなど、駅前としては少し雑多な印象だった。そんな状況をなんとかしようと、2008年に地元のなんさん通り商店街が動き出し、2011年には27の団体が集まり協議会を発足した。

大阪府との話し合いを経て、「民間発信の再編だから、運営も民間でやろう」という方向が定まり、戎橋筋商店街振興組合、なんさん通り商店会、南海電気鉄道株式会社、株式会社髙島屋、株式会社丸井の4団体が中心となり、「なんば広場マネジメント法人設立準備委員会」が設立された。

歩行者のための広場へ

最初の計画では、マルイ側に一方通行の車道を残す案もあったが、警察との協議の結果、思い切って歩行者専用空間に。株式会社丸井もこの方針に賛同し、「なんば広場マネジメント法人設立準備委員会」に加入し、広場側に新しい入口を設けたという。

一方、髙島屋の東側には「ウラなんば」エリアのための荷捌き用車道が整備された。数週間にわたって荷捌き車両の利用状況を調査し、道路幅や開放時間を綿密に計算したそうだ。警備員が24時間体制で車両をチェックしているが、今後は体制を徐々に縮小する予定とのこと。なお、この道路に面した土地には駐車場を設けない方針だという。

このなんば広場を実現するために、地元が地元を説得した。再編にあたっては、周辺の商店街およそ120軒に一軒ずつ説明を重ね、丁寧に合意を得ていったという。「まちを良くしたい」という共通の思いが、プロジェクトの大きな推進力になった。

ほこみち制度で民間運営を実現

現在のなんば広場は、「ほこみち制度(歩行者利便増進道路制度)」を活用し、民間主体で管理・運営が行われている。この制度によって、道路空間の一部を民間が占用・活用できるようになった。その結果、なんば広場では単なる通行空間ではなく、滞在・交流のための空間として整備が進んだ。

さらに、自転車の放置を防ぐために明確なルールを設け、警備員の巡回や防犯カメラの設置など、安全面の対策も徹底。これにより、歩行者が安心して滞在・回遊できる広場として、地域の人々にも観光客にも親しまれる空間が実現した。

広場の“これから”を見据えて

広場の運営費は、現在はマネジメント委員会に参加する5団体が負担しているが、今後は広場自体の収益でまわしていくことを目指している。休日には1日120万円ほどでイベントを開催したり、デジタル広告を活用したりと、駅前の一等地という立地を活かした収益化の試みが進んでいる。広場ができた当初は、イベントの開催に警察や大阪府の許可が必要で、行政や観光局が主催の公的なイベントしか行えなかった。しかし最近は規制が徐々に緩和され、より自由度の高い活用が可能になっている。

ただ、岸本さんは「イベントをやりすぎると、くつろぎの空間が失われてしまう」と話す。もともと人が自然に集まる場所だからこそ、にぎわいと居心地のバランスを大切にしている。なお、広場に置かれた机や椅子は一部故障があるものの、これまで盗難の被害は一度もないという。

デザインのこだわり

デザインを手がけたのはイーデザイン。「人が主役になるように」という思いから、主張しすぎない控えめなデザインに仕上げられた。御堂筋側に寄せた形でベンチにもなるステージが設置され、イベントが行われていない時は人々が所々に座り、賑わっている。照明にも工夫が凝らされており、昼と夜でまったく違う雰囲気を楽しむことができる。

なんば広場は、ただの駅前再開発ではなく、“まちの玄関口をみんなでつくり直す”という試みだった。地元が主体となり、行政や民間が連携しながらつくり上げたこの空間は、これからも多くの人が集い、くつろぎ、思い出をつくる場として進化し続けていく。

視察を終えた感想

日曜日のお昼頃に見学を行った際、なんば広場はたくさんの人で賑わっていた。収納式の机や椅子はほとんど埋まり、ステージのようなベンチにも多くの人が腰かけていて、思い思いに過ごしていた。地元の人や観光客にとって、なんば広場が気軽に立ち寄れる憩いの場所になっていることを感じた。このように心地よい空間になっているのは、広場をつくる際にさまざまなシミュレーションを行い、必要なものを残し、他の場所で補えるものは移し、時代の変化に合わせて不要なものを取り除いた結果なのだと思う。丁寧に整えられたことで、上質で居心地の良い歩行者空間が生まれたのだと感じた。名古屋では、地下に駅がある場合、地上には出入口があるだけで、人のにぎわいがあまり感じられないことが多い。なんば広場のように、地下から地上へと人の流れがつながり、まちに活気が生まれるような場所があったらいいなと思った。

なんば広場の説明を聞いたあと、なんばから御堂筋を北上するように散策した。現在、大阪市では御堂筋の再編を進めており、これまで6車線あった車道を4車線に縮小し、その分歩道を拡張し歩行者空間の充実を図っている。御堂筋の南側、繁華街にあたるエリアでは実際に歩道の拡張が進み、歩道いっぱいに人が賑わっている。一方、北側のオフィスエリアではまだ合意形成が進まず、事業が進んでいない状況にある。同じ御堂筋であっても、地域ごとに異なる雰囲気が味わえるのが印象的だった。

なんば広場から御堂筋を北上すると辿り着く道頓堀は観光客を中心として多くの人で溢れ賑わっていた。「なんば広場と道頓堀を一体としてイベントを展開していきたい」という思いもあるそうで、もしこの2つの賑わいエリアが連携してイベントを行えたなら、相乗効果によってさらに多くの人を呼び込み、“歩くだけで楽しい大阪”という都市の魅力をいっそう高められるのではないかと感じた。この波及効果は、南北に広がる御堂筋全体、さらには大阪のまち全体にも影響を与えていくだろうと思う。

今回の見学では2024年に開業したグラングリーン大阪も訪れた。大阪駅のすぐ前という好立地ながら、広大な緑地が整備され、心地よい滞留空間が広がっている。芝生や木陰で思い思いに過ごす人々の姿が印象的で、駅の喧騒を忘れさせるような穏やかな時間が流れていた。大ターミナル駅の周辺は通過動線が中心になりがちだが、このように“立ち止まれる場所”があることは、都市全体の魅力や居心地を大きく底上げしていると感じた。

岸本さん貴重なお話をありがとうございました!ほこみち制度の導入から地元合意、行政との協働、広場再編に向けたシミュレーションまで、まさに駅前広場の成功例とも言えるなんば広場の舞台裏を、じっくり伺うことができました。街づくりの現場でどのように合意を重ね、人が集う空間をつくり上げていくのか。そのリアルなプロセスを知ることができ、とても貴重な学びとなりました!

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